産業用マーカー装置は、なぜレーザーマーカーが優れているのか?

2025/03/03

  • Murrplastik

増田 将吾

製造現場では、ケーブルや部品に識別情報を印字する「産業用マーカー装置」が欠かせません。

普段何気なく使用しているこれらの装置ですが、さまざまな印字方式があり、用途に応じた最適な選択が重要です。
中でも近年特に注目を集めているのが、精細な印字が可能で、印字が消えない「レーザー方式」のマーカー装置です。

本記事では、産業用マーカー装置の種類や必要性を解説しながら、レーザーマーカーの優れた点を詳しくご紹介します。
さらに、弊社で取り扱っているMurrplastik社のレーザーマーカー装置「LMシリーズ」の特徴やメリットも詳しくご紹介しますので、導入を検討されている方はぜひ参考にしてください。

 Murrplastik社のレーザーマーカー装置「LMシリーズ」。レーザーのエネルギーで、金属ラベルなどの表面を焼いて文字を描く方式だ。


【目次】
産業用マーカー装置とは
産業用マーカー装置の必要性:機械のアッセンブリや保守・点検時に! 
産業用マーカー装置の導入:大手企業の推奨制度の例
産業用マーカー装置の主な4種類
インクジェット式と比較してレーザー式の優れている点とは?
 ーコスト面で選ぶなら? 初期費用 vs. ランニングコスト
 ー印字の耐久性は? 消えやすさの違いに注目
 ーメンテナンスは楽? インク交換とクリーニングの手間
 ー印字精度に違いはある? 細かいデザインはどっちが得意?
 ー生産効率を重視するなら? 印字スピードと作業の手間の違い
Murrplastik社のレーザーマーカー装置「LMシリーズ」をご紹介
 -全自動で複数枚のラベルを同時に印刷
 -多彩な形状、カラー、材質のラベルに印刷可能
 ー有名機器メーカーのラベル互換品までカバー
 -専用ソフトでデータを容易に管理
Murrplastik社のレーザーマーカー装置「LMシリーズ」の耐油試験結果!


産業用マーカー装置とは

産業用マーカー装置は、ケーブルや部品に識別情報を印字し、管理やメンテナンスを容易にするための装置です。

弊社のお客様の場合、機械の制御盤内、フィールド機器、端子台、ケーブル・チューブのマーキングなどに多く使用されています。適切なマーキングは、作業の効率化やトラブル防止にもつながるため、正確で耐久性のある印字が求められます。

産業用マーカー装置の必要性:機械のアッセンブリや保守・点検時に! 

ラベルは現場にあって当たり前のもので、その重要性について見落とされがちですが、ラベルを付けていないと、組み立て工程で必要以上に手間取ったり、ケーブルなどの誤配線が発生することもあります。

また、複雑な機械システムほど多くの部品やケーブルが使われるため、機械の保守・点検時にラベルが貼られていないと、どのケーブルと端子台がつながっているのか、その関係性をすぐに把握できなくなります。

そこで多少の手間は生じても、最初にラベルを付けて確認しやすくしておくことで、あとあとのメンテナンス性も断然違ってくるわけです。

産業用マーカー装置の導入:大手企業の推奨制度の例

このような背景から、自社にマーカー装置を導入しているメーカーも多いでしょう。
また大手企業の場合だと、発注元指定制度を取っており、一次・二次の下請け部品会社に対して、製造現場の備品として特定メーカーのマーカー装置を導入するように推奨していることもあります。

たとえば、ポルシェ、BMW、メルセデス・ベンツといった欧州の大手自動車メーカーでは、特定のレーザーマーカー装置が使われており、その傘下のサプライチェーンでも自社が推奨するマーカーを導入するように促しています。こういったことで製品の品質を担保しているのです。

産業用マーカー装置の主な4種類

産業用マーカー装置には、「レーザー式」「インクジェット式」「サーマル式」「エングレービング式」など、さまざまな方式があります。

「レーザー式」は、高エネルギーのレーザーを照射し、素材の表面を変質させて刻印する方式です。「インクジェット式」は、液体インクを微細なノズルから噴射して印字します。
「サーマル式」は、熱転写技術を利用し、専用リボンのインクを熱で素材に転写する方式です。「エングレービング式」は、彫刻刀のようなツールを用いて金属を削り、文字や模様を刻みます。

レーザー方式のメリット。レーザ―で金属などのラベル表面を焼いて印字するので、文字が消えないというメリットがある

Murrplastik社ではレーザー式マーカー印字機を
取り扱っております

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インクジェット式と比較してレーザー式の優れている点とは?

Murrplastik社は産業用マーカー装置として、「レーザー式」と「インクジェット式」の2方式を推奨しています。
しかし、どちらの方式が最適かは、用途や重視するポイントによって異なります。そこで、「レーザー式」と「インクジェット式」を比較し、違いを表にまとめました。

項目 インクジェット式 レーザー式
印字の耐久性
(インクが摩耗・消えやすい)

(半永久的に刻印可能)
ランニングコスト
(インクや消耗品が必要)

(消耗品不要で低コスト)
メンテナンス
(インク補充・ヘッド清掃が必要)

(ほぼメンテナンス不要)
印字速度
(比較的遅い)

(高速印字)
環境への影響
(インクの使用、廃液処理が必要)

(インク不要で環境に優しい)
印字の精細さ
(にじみやかすれが発生することがある)

(高精細なマーキングが可能)
色の表現
(自由度が高い)

(繊細な色の再現は苦手)
素材の適応性
(さまざまな素材に印字可能)

(特定の素材に適用が必要)
初期コスト
(低コストで導入可能)

(設備投資が必要)

中でも産業用マーカー装置を選ぶ際に重要な コスト・耐久性・印字精度・メンテナンス・生産効率 の5つの観点から、レーザー式の優れている点を解説していきます。

コスト面で選ぶなら? 初期費用 vs. ランニングコスト

インクジェット式は本体価格が比較的安く、導入しやすい点が魅力です。しかし、インクは消耗品のため、定期的な交換が必要となり、ランニングコストがかさみます。また、インクの補充やヘッドクリーニングなどのメンテナンスの手間も発生するため、長期的な運用コストを考慮する必要があります。

一方、レーザー式は初期投資がやや高めですが、インクを使用しないためランニングコストがほぼかからないのが大きなメリットです。消耗品の交換が不要なため、長期間使用する場合は結果的にコストを抑えられる可能性が高くなります。

短期間での導入コストを抑えたいならインクジェットマーカー、長期的なコスト削減を重視するならレーザーマーカーが適していると言えるでしょう。

印字の耐久性は? 消えやすさの違いに注目

高温・多湿、油や薬品の影響を受ける環境では、インクジェット式やサーマル式のラベルは劣化しやすく、摩擦や薬品、油分によって印字が薄れたり消えてしまう可能性があります。

レーザー式は、ラベルに直接文字を焼き付けるため、印字が消える心配がありません。

耐摩耗性・耐薬品性に優れ、過酷な環境下でも長期間にわたって安定した可読性を維持できるため、長期的な耐久性を重視する場合はレーザーマーカーが最適です。

ちなみに、弊社ではMurrplastik社のレーザーマーカー装置「LMシリーズ」を使用し、耐油試験を実施しました。本記事の最後にその結果を掲載しているので、ぜひ参考にしてみてください。

メンテナンスは楽? インク交換とクリーニングの手間

インクジェット式はインク交換やプリントヘッドのクリーニングが必要で、定期的なメンテナンスやインク補充が求められます。また、インクが切れた際に即時対応が必要なため、運用に一時的な中断が生じることもあります。

レーザー式は、インク不要で、メンテナンスが少なく済むため、手間がかからないのが大きなメリットです。消耗品の交換もほぼなく、クリーニングや交換作業が少ないため、長期的には非常に手間が少ないです。

印字精度に違いはある? 細かいデザインはどっちが得意?

インクジェット式は多様なフォントやデザインに対応できますが、インクのにじみや細かい部分のぼやけが発生しやすく、また、印字面の素材によってはインクの定着が不均一になり、仕上がりにばらつきが出ることもあります。

レーザー式は、文字を直接刻むため、極めて精細な印字が可能です。にじみやズレがなく、細かい文字や高精度なバーコードも鮮明に刻印できるため、精密な印字が求められる場面には最適です。

長期間にわたる品質の安定性を考えると、クリアでシャープな印字を長期間維持できるレーザーマーカーがおすすめです。

生産効率を重視するなら? 印字スピードと作業の手間の違い

インクジェット式は、柔軟性が高くカラー印字が可能な一方で、印字スピードが比較的遅くなることがあります。特に、細かい文字や複雑なデザインを印字する場合、処理に時間がかかることがあり、生産性に影響を与えることもあります。

一方、レーザー式は非常に高い印字スピードを誇り、特に大量印字が求められる場合でも安定した作業効率を維持します。

生産性を重視するなら、レーザーマーカーの方が圧倒的に効率的です。

Murrplastik社のレーザーマーカー装置「LMシリーズ」をご紹介

ここまで産業用マーカー装置についてご紹介してきましたが、次に弊社が取り扱っているドイツ・Murrplastik社のレーザーマーカー装置「LMシリーズ」についてご紹介いたします。

LMシリーズは、幅広い産業用部品に適用可能な高性能なレーザーマーカーです。

また、Murrplastik社は、自社で専用ラベルも開発しています。これは、産業用途では耐候性・耐油性・耐薬品性・耐腐食性などに優れたラベルが求められるためです。

弊社展示会にて出展したLMシリーズ。ストッカーに複数枚のラベルを入れ、さまざまな種類のラベルを自動で一括印刷することが可能

 

全自動で複数枚のラベルを同時に印刷

LMシリーズの特徴的なポイントの一つは、新開発のレーザーソースを採用し、一度の操作で複数枚のラベルを全自動で印刷できることです。これにより、作業効率が大幅に向上します。

さらに、ストッカーに複数枚のラベルを入れ、さまざまな種類のラベルを自動で一括印刷することが可能です。ラベルにはQRコードも印字可能で、製品のトレーサビリティにも対応できる点が大きな特徴です。

ラベリング実例その1。端子台にラベリングすることで、作業時の誤配線を防止することが可能になる

 

ラベリングの実例その2。文字だけでなく、QRコードも印字できる。ここではプラスチック製のラベルを使用

 

多彩な形状、カラー、材質のラベルに印刷可能

Murrplastik社では、ケーブルやチューブへのマーキングに適したラベルや、耐油性、難燃性など、さまざまな環境に対応できる多彩な形状、カラー、材質のラベルを取り揃えており、取り付けも簡単です。

レーザー式のため、金属製ラベルにも精細な刻印が可能です。印字時に発生する匂いや煙に対応するため、吸引用装置も標準装備されています。
また、金属ラベルのみならず、よりリーズナブルにお求めいただけるプラスチック製も用意しています。高分子ポリマーにレーザーを照射することによる炭化の現象を利用し、コントラストのはっきりした印字が可能です。

さらに、これらのラベルにはホルダーケースも含まれており、取り扱い方法や材質、文字数に応じて、お客様のニーズにマッチした多様なラインナップをチョイスできます。

ラベリングの実例その3。Murrelektronik社のコネクタケーブルにはホルダーが付いており、そこにラベルをストックできて便利

有名機器メーカーのラベル互換品までカバー

Murrplastik社の強みは、マーカー装置だけでなく、専用ラベルも併せて開発している点に強みがあります。
制御盤内の部品ではリモートIO、リレー、遮断機、電源、端子台、など有名機器メーカーのラベル互換品までカバーしています。例えば、Murrelektronik社の製品にフィットするラベルも取り扱っており、既存の設備に同じラベルを使用できます。

これにより、既存の設備と同じラベルを使用できるため、見た目の統一性が保たれ、トラブルなく運用が可能です。

ラベリングの実例その4。Murrplastik社の専用ラベルの見本。さまざまな形状・カラー・材質があり、有名機器メーカーのラベル互換品までカバー

専用ソフトでデータを容易に管理

次にLMシリーズは、操作面にも大きな特徴があります。使い勝手の良い専用ソフトが添付されており、直感的なGUIで設定や管理が行えるようになっています。
印字データはExcelから一括でインポートでき、ファイル形式で保存し、プロジェクトごと、あるいは製品機種ごとに、データを容易に管理できます。

使い勝手の良い専用ソフト。直感的なGUIで印字の設定ができ、データも製品機種ごとに容易に管理することが可能

Murrplastik社のレーザーマーカー装置「LMシリーズ」の耐油試験結果!

弊社では、Murrplastik社のレーザーマーカー装置と従来のインクジェットマーカー装置に対して耐油試験を実施しました。

一週間の油浸け試験を行った結果、インクジェットマーカーではにじみが発生し、文字の視認性が低下する現象が確認されましたが、レーザーマーカーは、くっきりとした印字がそのまま残り、視認性が保たれていました。

油に限らず、さまざまな厳しい環境での使用においても、レーザーマーカーが優れた選択肢であることが証明されました。


左がレーザーマーカー、右がインクジェットマーカー。一週間油に浸けたところ、インク式に比べレーザー式ははっきりと印字が残っている

レーザー式の産業用マーカー装置は、コスト削減、耐久性、印字精度、メンテナンス性、生産効率の面で大きなメリットがあります。特に、長期的な視点で見たときのランニングコストや耐環境性の高さは、多くの現場で評価されています。

Murrplastik社の「LMシリーズ」は、これらのメリットを最大限に活かせる高性能なレーザーマーカー装置です。導入を検討されている方は、ぜひ一度お問い合わせください。産業用マーキングの品質向上に、レーザーマーカーを取り入れてみませんか?

Murrplastik社レーザー式マーカー印字機
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増田 将吾プロダクトマネージャー

主にMurrplastikやBinderを担当しています。
ヨーロッパの優れた製品を幅広く皆様にご紹介していきたいです。
週末にはボルダリングジムに通って汗を流しています。

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