機械式から電子式のサーキットプロテクタに変えるべき理由とは?(後編)

2023/04/10

  • Murrelektronik
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ニランカ・ゾイサ

前回は機械式のサーキットプロテクタ(以下、CP)の3つの課題と、その解決法について紹介しました。
今回は後編として、残りの2つの課題について解説し、すべての課題を解決できるドイツ・Murr Elektronik社の電子式CP「MICO」についても紹介しましょう。


【目次】
機械式CPの選定時に、遮断回路の反応によって使い分けが必要で面倒
米国電気工事規程「NEC」のClass2に対応したい場合はどうする?
機械式CPのすべての課題を解決したいなら、電子式CPがオススメ!


機械式CPの選定時に、遮断回路の反応によって使い分けが必要で面倒

さて4番目の課題は、機械式CPを選定する際に用いる回路によって、遮断回路が反応するタイプの使い分けをしなければならないことです。
具体的にいうと、機械式CPには反応速度の短い順から「瞬時形」「中速形」「低速形」の3種類に分類されます。
もちろん突入電流の検知も反応速度に依存します。低速形の場合は反応速度が遅いため、前回の課題のように、主電源の保護回路のほうが先に機能する場合があります。

機械式CPの種類。反応速度の短い順から「瞬時形(I)」「中速形(M)」「低速型(S)」に大きく分類できる。
回路構成によって適切なタイプを選ぶ必要がある。

したがって機械の仕様変更によって対象系統の消費電流が変わるときは、再度CPの選定をしなおす必要が出てきます。
設計変更が起きれば、BOM(部品表)も変わりますし、工数も掛かるので、そのぶんの人件費も考慮しなければなりません。
機械のオプション追加に備えて、あらかじめ別の機械式CPを用意するとなればコストもアップします。また制御盤内のスペースの圧迫にもつながります。

ところが電子式CPであれば、機械式CPのように種類がなく、1種類で済むため面倒な選定もいらず、在庫管理もラクになります。
電子式CPでは、遮断電流の変更をスイッチ(ロータリ式やプッシュ式)で簡単に設定できます。
そのためオプション変更時にも定格電流を簡単に変更できるので、回路を変更したり、それに伴うBOMの書き換えもなく、コストの削減につながります。
またオプション変更時の予備電源系統などの設置も不要なので、制御盤自体をコンパクトにできます。

以上のように、機械式CPと電子式CPを比べてみると以下のようになります。

回路によってCPを使い分ける場合の機械式のデメリットと電子式のメリット。
機械式では短絡時と突入電流の発生時に難があるため、できれば電子式CPを選びたい。




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米国電気工事規程「NEC」のClass2に対応したい場合はどうする?

5つ目の課題は、北米に機械を輸出する場合に、米国電気工事規程「NEC」(National Electrical Code)のClass2に対応したいということです。
そのためには電源も規格に対応しておく必要があります。

ちなみにNECとは、全米防火協会(NFPA)が策定・管理している電気配線・電気設備・設置の規格で、電気の利用に伴って発生する危険から、人命や財産を保護することを主な目的としています。
UL規格ではNFPAをベースにしています。NEC Class2は、電力制限回路が最大100VAに規定されており、これにより発火の恐れがなく、安全であると定義されています。
また感電の危険性からも保護されます。

米国電気工事規程NEC(National Electrical Code)Class2。
UL1310 Class2に対応した電源出力側の回路がNEC Class回路と呼ばれる。最大電力は100VA以下という条件。

ここでNEC Class2に対応する回路設計に求められるのは、UL1310 Class2に対応した電源です。
この規格用の電源は出力側の回路が「NEC Class2回路」と呼ばれます。
Class2は、最大電力が100VA以下なので、たとえば電圧が20Vでは、100VA÷20V=5A以下になります。
北米に輸出する機械では、安全性の観点から、あらかじめメーカーから対応を求められることがあるので、注意しましょう。

NEC Class2回路を採用するメリットは、エンドユーザーだけでなく、機械を提供するメーカーにもあります。まずUL認証が不要になる場合があります。そのためUL認定のための工数や費用が削減できます。
またUL認証が必要ないので、部品選定もラクになります。これにより国内と北米の部材仕様を共通化でき、コストダウンにもつながるでしょう。

ただし、NEC Class2回路の設計で注意すべき点もあります。
1つ目は各負荷ごとに、NEC Class2対応(UL1310取得済)の電源を利用する必要があること。
たとえば、4系統の回路があれば、それぞれにNEC Class2対応の電源を使います。さらに前出の規定では最大電力が100VAなので、これに収まるようにしなければなりません。
たとえば24V回路であれば、最大電流は100VA÷24V÷4回路=約1A以下になります。

NEC Class2回路の設計で注意すべき点。NEC Class2対応(UL1310取得済)の電源を利用と、最大電力が100VAなので、これに収まるように系統の負荷を設計すること。

このように回路構成によっては、UL1310取得済の電源が複数必要になり、そのためコストがかかるだけでなく、設置スペースの確保や配線工数も増えてしまいます。
さらに制御盤内に電源が多くあると、盤内の温度が上昇するという副作用もあります。

そこで、この解決法としてNEC Class2対応の電子式CPを採用します。電源内部の分岐回路によって、個々の系統がNEC Class2対応するので、複数の電源が不要になり、制御盤が小型化でき、発熱要因もなくなり温度管理もラクになります。
当然ながら配線工数も減り、コストダウンも可能です。

NEC Class2対応の電子式CPのメリット。対応製品を採用すれば、前出の2つの課題を解決できて、配線の工数も減り、コストダウンにもつながる。

 

ここまで説明してきた電子式CPのメリットについて、以下にまとめておきましょう。

電子式CPを使用していた場合に享受できる利点。各課題をそれぞれ解決できて安心だ。




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機械式CPのすべての課題を解決したいなら、電子式CPがオススメ!

最後になりますが、弊社が取り扱っている具体的な製品について簡単に触れておきます。

弊社が取り扱うドイツ・Murr Elektronik社の電子式CP「MICO」の外観。従来の機械式CPの問題点を解決してくれる頼もしいCPだ。

 

弊社ではドイツのMurrelektronik社の電子式CP「MICO」を取り扱っています。主な特徴は以下の通りです。

・入力電圧24Vを複数系統に分岐でき、各系統ごとに電流値を監視。その際に各系統の遮断電流値をロータリスイッチで設定変更できる(1/2/3/4A、1/2/4/6A、4/6/8/10A)
・遮断電流値の90%でグリーンLED点滅の通知信号を出力し、短絡・遮断電流値をオーバーすると、異常回路のみ迅速かつ安全に遮断し、レッドLEDのアラート信号を出力
・各系統を時間差ごとに起動させるカスケーディングスタート機能を装備し、電源への同時突入電流を回避できる
・LEDボタンを押すことで、各分岐を手動で停止させることが可能
・周囲温度に影響なく、迅速に遮断動作が可能

このように、電子式CP「MICO」は、従来の機械式CPの問題点を解決してくれる頼もしいCPです。UL規格にも対応しているので、ぜひ皆様の電源ラインの組み込みとして、ご検討いただければ幸いです。




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