ケーブルグランド基本の基本(前編)~カタログから読み解く製品選定のツボ

2025/02/07

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増田 将吾

ケーブルグランドとは、制御盤や中継箱などの筐体や、モータ・センサーに取り付けてケーブルを引き出すための「取付け口」となるパーツです。

また、ケーブルグランドには多くの別称があります。たとえば、接続用コネクタ、ボックスコネクタ、貫通ブッシュ、ブッシング、貫通式コネクタ、ケーブル押え、ケーブルコネクタ、コードクランプ、ケーブルシール、キャプコンなどの名前でも知られています。

本記事では、このケーブルグランドについて、基本的な知識と選定方法を中心に解説します。カタログを参考にしながら、押さえておきたいポイントを詳しく学んでいきましょう。


【目次】
ケーブルグランドとは?その役割
ケーブルグランドとは?その重要性
ケーブルグランド選定の基本:押さえるべき3つの重要項目
 ①法令と規格に適合しているか確認
 ②用途と使用環境を考慮
 ③定格値を確認
ケーブルグランド選定の基本:カタログから学ぶ選定のコツ
 ①認証規格が満たしているか確認
 ②使用環境に適したIP保護等級か確認
 ③防爆規格ATEXに対応しているか確認
 ④利用用途に合った材質か確認
 ⑤適合径を確認
ケーブルグランド選定の基本:ネジの種類と締め付けトルク値
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ケーブルグランドとは?その役割

ケーブルグランドは、制御盤、ハンディコントローラ、中継ボックス、各種装置などのケーブル取り出し口に取り付けられ、ケーブル差込口からの水、油、粉塵の侵入を防ぐ役割を果たします。

また、ケーブルが引っぱられた場合でも接続部分が保護されるように、ストレインリリーフ機能を提供します。
これにより、ケーブルの固定や外部環境からの保護を通じて、ケーブルの安全性を確保する役割を担っています。

ケーブルグランドは、制御盤や中継箱などの筐体から、ケーブルを引き出すための「取付け口」となるパーツ。粉塵・水からの保護、延焼防止、ノイズ保護などの役割がある。

ケーブルグランドとは?その重要性

ケーブルグランドは、ケーブルの固定だけでなく、取付けの迅速さ、ケーブルの緩み防止、確実な気密性などが求められる重要なアクセサリです。

特に筐体内部を外部環境から保護することは重要であり、そのために粉塵や水からの保護素材や、火災時に延焼を防ぐ難燃性の素材が使用されています。
さらに、外部環境からのノイズの影響を防ぎ、筐体内部で発生するノイズが外部に漏れ出すのを防ぎます。

ケーブルグランド選定の基本:押さえるべき3つの重要項目

ケーブルグランドは、取り付け箇所やケーブルの外径、色、取り付け穴の寸法、取り付けネジの種類に応じて、多種多様なタイプやサイズが存在します。さらに、使用環境によっては耐薬品性や耐油性が求められることもあり、用途に応じた適切な製品の選定が重要です。

ケーブルグランドを適正に選定するためには、「法令・規格」「用途・使用環境」「定格値」という3つの重要項目を押さえましょう。

①法令と規格に適合しているか確認

皆様が開発したり、製造する機械のなかには、海外向けの製品もあるかもしれません。そのため、輸出する国や地域の法令や規格に適合したものを選定する必要があります。

欧州のCEマークやRoHS、北米のULやCSA規格など、輸出地域の規格に合った製品を選ぶ。できるだけ幅広く規格がカバーされていることがポイント。

日本国内ではJIS規格(日本産業規格)が一般的ですが、海外では地域ごとに異なる規格や法令があります。例えば、欧州ではCEマークやRoHS規制、北米ではUL規格やCSA規格への準拠が求められます。海外向けには、できるだけ幅広く規格がカバーされているものを選ぶとよいでしょう。

これらの法令や規格を正しく理解し、それに適合した製品を選定することで輸出後のトラブルや規制違反を防ぎ、スムーズな輸出と現地での使用が実現します。

②用途と使用環境を考慮

次に「用途・使用環境」ですが、使い方や機械の種類によって、さまざまな条件が求められます。

食品機械、工作機械、輸送機械など、ケーブルグランドを組み込むシステムの用途・使用環境などで環境が異なってくるので、条件を洗い出して最適な製品をチョイスする。

たとえば、食品機械では高温や低温といった周囲環境に加え、洗浄時に酸やアルカリ性の薬品が使用される場合があります。そのため、幅広い温度範囲に対応し、耐薬品性に優れたケーブルグランドを選ぶことが重要です
工作機械の場合、油がかかるような過酷な環境では、耐油性や使用温度の広い製品を選定する必要があります。

また、電車や自動車などの輸送機械の場合は、振動・衝撃に強いものが求められ、走行時にケーブルグランドのネジが緩まないように配慮されていることも選定条件になります。

さらに、逃げ場のない鉄道や船舶のような密閉空間で火災が発生すると、有毒ガスが発生し、人命にかかわるような危険な状態になります。このような環境では、ハロゲンフリー製品も条件の1つになるでしょう。
加えて、爆発性の高い環境では、防爆仕様のケーブルグランドを使用することが求められます。
そのほかEMCノイズからの保護も、多くの用途で考慮すべき重要な要件です。

用途や使用環境に応じた最適なケーブルグランドを選び、安全性や耐久性を確保することで、機械の性能を最大限に発揮しましょう。

③定格値を確認

「定格値」とは、製品が安全に機能するために設定された限界値のことです。この値を超えて使用することは、性能低下や故障を招く恐れがあります。

ケーブルグランドの場合は、あまり意識する必要はないのですが、設置条件などによって定格値が変化する場合があります。特に、ケーブルが固定されていない場所や可動するような場所では、使用温度などが定格値よりも下がることがあるので、長期的な性能と安全性を確保するためには念頭に入れておきたいところです。

 

ケーブルグランド選定の基本:カタログから学ぶ選定のコツ

これまでケーブルグランドの基本的な選定要件について紹介しました。

実際にケーブルグランドを選定する場面では、専門のECサイトで製品情報を比較したり、商談の際にカタログを受け取って検討するケースが多いかと思います。カタログには製品の特性や規格が詳しく記載されており、選定に必要な情報が網羅されています。

そのためここで、ドイツLAPP社の「SKINTOPシリーズ」のカタログを参考にしながら、選定時に押さえたいポイントを見ていきましょう。

選定時には、「認証規格」「IP保護等級」「防爆規格」「材質」「ケーブル適合径」「取り付けネジサイズ」「締め付けトルク値」の7つを押さえることが重要です。

LAPP社の「SKINTOPシリーズ」で選定時に押さえたい7つのポイント。①認証規格、②IP保護等級、③防爆規格、④材質、⑤ケーブル適合径、⑥取り付けネジサイズ、⑦締め付けトルク値をチェック。

①認証規格が満たしているか確認

まず輸出国に対して、CEやULなどの認証規格に適合しているかを確認することが重要です。

UL認証には「リスティングマーク」と「レコグニッションマーク」の2種類があります。
リスティングマークは、ULの要求事項を満たした最終製品に付与される認証マークであり、レコグニッションマークは、単体では機能しない、あるいはその機能が限定される部品や材料に対して付与される認証マークです。

ケーブルグランド自体にレコグニッションが付与されている場合、追加試験が不要となるため、最終審査がスムーズに進みます。このことにより、コスト面でも大きなメリットを得ることができます。

選定時に押さえたいポイント①認証規格。欧州や米国など、輸出先に合ったものを選ぶ。ULの場合は「リスティングマーク」と「レコグニッションマーク」の違いにも注意。

②使用環境に適したIP保護等級か確認

防塵・防水性能を示すIP保護等級については、「【図で解説】IP保護等級(IPコード)とは?防水、防塵性能を示す規格について」で詳しく解説しているので詳細は割愛しますが、「IP68 -5bar」という表記の場合、防塵性能が6、防水性能が8で、いずれもハイグレードになります。
「5bar」とは水面下40mぐらいの環境で、1時間浸水しても筐体内部の環境を保てるレベルになります。

選定時に押さえたいポイント②IP保護等級。防塵と防水性能を合せた表記になる。IP68 5barなら、防塵性能6、防水性能8で、「5bar」は水圧(pa)を表す。

また、IP保護等級と同様に防塵・防水性能を示す規格として、米国の「NEMA(National Electrical Manufacturers Association)」があります。NEMA規格では、タイプ1からタイプ13までのグレードに分類されており、たとえばタイプ1は屋内利用(インドアユース)向け、タイプ12はIP67に近い性能を持ちます。

IP保護等級とNEMAは似た規格ですが、IPは防塵・防水性能に特化し、NEMAはそれに加えてさまざまな要件を含みます。そのため、NEMAがIPの要件を満たすことはありますが、逆は必ずしも当てはまりません。

ただし、必ずしも数字が高いほど性能が優れているわけではないので注意しましょう。


③防爆規格ATEXに対応しているか確認

防爆雰囲気(可燃性ガスや可燃性液体の蒸気が空気中に存在する状態)で使用する際には、制御ボックス内にガスが侵入しないことを担保する規格として「ATEX」(Atomosphere Explosive)があります。
ATEX規格では、揮発性媒体の状態(ガス、蒸気、固体)に基づいて、3つのゾーン(時々~常時)に分類しています。

さらに、ガスや粉塵の種類、防爆原理(本質安全など)によって、適用される防爆グレードが決まります。これらの基準に基づいて適切な製品を選定することで、爆発リスクを効果的に低減することが可能です。

選定時に押さえたいポイント③防爆規格「ATEX」は、揮発性媒体の状態(ガス、蒸気、固体)、ガスや塵の種類、防爆原理などで、各グレードが決まる。

④利用用途に合った材質か確認

ケーブルグランドの材質については、先ほども触れた難燃性、耐油性、耐薬品性、高温・低温対応、ハロゲンフリーなどの特性を必要に応じて確認することが重要です。

特に注意したい点は、構成部品となるシーリング材がゴムなどの素材で作られている場合です。たとえ本体の金属が150℃までの耐熱性を持っていたとしても、パッキンやOリングがその温度に対応できない場合があります。このような点を考慮し、全体の材質構成を確認した上で選定を行いましょう。

選定時に押さえたいポイント④材質は、本体だけでなく、構成パーツの材質にも目を向けたい。シーリング材がゴムなどの場合は耐熱性が保証されないこともある。

⑤適合径を確認

実際にケーブルグランドを使用する際は、ケーブルの適合径を確認することも重要です。

たとえば、M20サイズのケーブルグランドの場合、カタログ上の適合径はφ6mm~13mmとされていますが、実際には中心値であるφ9.5mm前後を選ぶと良いでしょう。

中心値を選ぶことで、適切に密着し、IP値(防塵・防水性能)やストレインリリーフ機能が最大限に発揮され、長期間安定した状態を維持できます。
また、適合範囲の上限ギリギリの太いケーブルを無理に通すと、劣化や破損のリスクが高まります。ケーブルの公差や、将来的に交換する可能性も考慮し、余裕を持った選定をすることで、後々のトラブルを防ぐことができます。

ケーブルグランド選定の基本:ネジの種類と締め付けトルク値

ケーブルグランドの取り付けに使用されるネジにもさまざまな種類があります。例えば、日本ではPFネジ(Gネジ)、欧州(ドイツ)ではPGネジ、北米ではNPTネジ、国際的にはISO(国際標準化機構)規格のMネジが広く使用されています。

こちらも必要に応じたものを選択してください。ネジを締め付ける際には、適切なトルク値を守ることが製品の性能維持につながります。推奨されるトルク値で締め付けることで、ケーブルグランドの耐久性が向上し、製品寿命を延ばすことができます。


選定時に押さえたいポイント⑤ケーブル適合径はカタログ値の中央値に近いものにする。ポイント⑥取り付けネジサイズは、ネジ種によって必要なものを選択。ポイント⑦締め付けトルク値は製品寿命に関係するので、トルクレンチで推奨値になるようにする。

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次回は、弊社で取り扱っているケーブルグランド製品の紹介と、具体的な事例について紹介する予定です。お楽しみに!



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増田 将吾プロダクトマネージャー

主にMurrplastikやBinderを担当しています。
ヨーロッパの優れた製品を幅広く皆様にご紹介していきたいです。
週末にはボルダリングジムに通って汗を流しています。

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