いまさら聞けない! NFPA基本の基本 【第3回】NFPA79の2007年の改定は茨の道? またもや思わぬ弊害が発覚!

2019/04/02

  • LAPP

砂川 裕樹

2007年の改定後に起きた2つの弊害で困ってしまったメーカー

いまさら聞けない! NFPA基本の基本 シリーズ
【第1回】NFPA70とNFPA79の違い。勧告なのに、なぜ遵守する必要があるの?
【第2回】NFPA70とNFPA79は過去にどう改訂された? NFPA79の2007年改定で日本が騒然となった理由

第2回目のコラムでは、NFPA79の2007年の改定で、日本のメーカーが騒然となった話をお伝えしました。しかし、まだ話は終わりではなく、続きがあるのです。


2007年の改定は、産業機械へのケーブルの安全性を高める目的で、AWMケーブル(リコグナイズド認証)から、リステッド認証ケーブルに切り替えましょう! という話でした。NFPA的には良かれと思い改定したのですが、実は機械メーカーの立場から見ると、その結果またもや、いろいろな弊害が出てきてしまいました。


まず1つ目に、第2回で述べた通り、2007年の改訂では「AWMケーブルはリステッド認証を得た完成品の中でしか使用できない」とされたものだったため、AWMケーブルを継続したい場合は、機械もしくは装置全体でリステッド認証を受ける必要が出てきました。申請にかかる費用や時間もばかにできるものではなく、機械メーカーから不満が続出しました。

そもそもAWMケーブルの規格ではそこまで高い難燃性が求められなかったため、材質にPVCが使われることが多かったのです。ケーブル外径も小さくでき、さらに高い柔軟性により工事の際にケーブル取り回しが楽ということで幅広い用途に用いられていました。
しかしメカ的強度や温度特性、さらに難燃性の要求レベルが上がったリステッド認証品では、従来のAWMケーブルと比べ、ケーブルが太くなり柔軟性も下がる結果となってしまったのが2つ目の弊害です。

では、リステッド品で従来のAWMケーブルと同等の屈曲ケーブルはどこのケーブルメーカーが扱っていたのでしょうか?
……残念ながらどのケーブルメーカーも当時は販売していませんでした。

この影響を受けた代表例が、可動部に設置されるサーボ動力用ケーブルです。制御盤外に設置されるこのケーブルにはUL508A(制御盤向けのUL規格)の適用外になるため、2007年の改訂の結果、個別でリステッド認証を受けたケーブルを使用する必要がありました。仮に、低い屈曲性に妥協できたとしても、ケーブル曲げ半径が大きくなるに従いケーブルベアも大型化してしまいます。

このようにNFPA79-2007の要求自体と、それを満たすことには大きな剥離がありました。
いくらNFPAがリステッド認証のケーブルを使えといっても、機械メーカーとしてはそもそも屈曲性が必要な環境ではAWMケーブルしかないので使えないという話になり、さまざまな不満が湧き出た結果、NFPAは2012年の改訂での「制限付きでAWMケーブル使用可能」に踏み切ったのです。

NFPA79の2012年の改定で、この弊害を解決する救済策が登場

2012年の改訂では前回の[12.2.7.3]の項目が削除され、新たに[12.9]が追加されました。この[12.9.2]では、ある一定の条件下においてAWMケーブル(リコグナイズド認証)を利用してもよいということになりました。
一定の条件とは、【★写真1】のように[12.9.2 (1)および(2)]に記載されています。
 

 【★写真1】NFPA79、2012年の改定で[12.2.7.3]の項目が削除され、新たに[12.9]が追加。
「AWMが承認された機器との併用が確認され、機器製造者の指示書に従って使用する場合
(自己責任でAWMケーブル(リコグナイズド認証も認められる)」


「意図された用途に対して確認されている組み立て品の一部の場合」、「AWMが承認された機器との併用が確認され、また機器製造者の指示書に従って使用する場合(には認められる)」というものです。これだけでは何を意味している文なのか意味不明ですが、要は前述のとおり可動部でのケーブル使用が問題に上がったので、サーボアンプもしくはモータメーカーが使用しても問題ないと判断をし、マニュアル等の指示書に記載をしたケーブルであれば、AWMケーブル(リコグナイズド認証)でも使用が許されるということです。

ただし、最終的に米国に機械を輸出する際には、なぜAWMケーブル(リコグナイズド認証)を使ったのか、各州の規制監督局(AHJ)に、その理由をしっかりと説明する必要があります。結局は最終判断はAHJによるものなので、リスクや手間を省く面を考えると、リステッド認証されたケーブルを最初からチョイスしたほうがリスク回避になるでしょう。

現在は、屈曲部などに対してもリステッド認証された最新ケーブルが登場しています。もちろん、弊社が取り扱っているLAPP社のケーブルも、かなり前からリステッド認証に対応しています。詳細については弊社の営業担当にお問い合わせください。

ここまで機械側のNFPA79に関してご説明してきました。次回は、いよいよ建屋内のNFPA70におけるポイントについてご紹介したいと思います。

★関連製品
ULリスティング ケーブル→https://www.kmecs-automation.jp/standard/002/cable/
ULレコグニション ケーブル→https://www.kmecs-automation.jp/standard/019/cable/






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Murrelektronikのエキスパートになるべく奮闘しています。
お客様の問題点の解決や要望に応えられるよう日々勉強中です。
学生時代から鹿島アントラーズの熱狂的ファンでチームが勝つべく毎週全力応援。
時には残念な結果に終わることもありますが、敗戦をお客様の機械配線のご相談に引きずらないようオンオフの切り替えをしっかりしております。

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