透明体検出光電センサの活用術 | 製品特性と性能実験結果を公開
2024/10/24
- Contrinex
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砂川 裕樹
このコラムでは産業用センサで「こんな使い方ができればよいのに! 」というお客様のニーズに応えるセンサについて紹介していきます。
今回はその中でも弊社が扱う、Contrinex社の透明体検出光電センサ「TRU-C23PAシリーズ」を取り上げさせていただきます。
UV光源を採用し、確実に透明体を検出できるContrinexの光電センサ「TRU-C23PAシリーズ」
このセンサは、これまでご提案した企業様から大げさな表現ではなく「これは革命的!」と大反響を巻き起こした製品です。
今回は透明体検出光電センサの基礎的な知識を解説した上で今回取り上げる製品の強み・特性をご紹介し、その製品での実験結果を公表していきます。
【目次】
透明体検出光電センサの検出方式とは?
拡散反射型
透過型
回帰反射型
その他の検出方法
透明体検出光電センサ「TRU-C23PAシリーズ」の強み・特性
透明体検出光電センサ「TRU-C23PAシリーズ」の性能実験
透明体検出実験①アクリル板
透明体検出実験②カラーフィルム
透明体検出実験③ 液体入りの透明ビン
まとめ
透明体検出光電センサの検出方式とは?
透明体検出光電センサには多くの種類があります。
ここでは基本的な3つの検出方式についてご紹介します。
拡散反射型
拡散反射型は最もベーシックでシンプルな検出方式です。仕組みとしては投光器から検出体に光を照射し、その検出体からの反射光を受光することで、物体の有無を検出します。
透過型
透過型は対向する投光・受光器を用意し、その間を検出体が遮ることで物体を検出します。
回帰反射型
回帰反射型は透過型の応用として、センサの投光が検出体をすり抜け、さらにその先にあるリフレクタ(反射板)から戻ってくる光を検出する方式です。
これは検出物体を通る際の減衰を判断し、物体の有無を認識しています。
その他の検出方法
上記以外にも「狭視界反射型」「限定反射型」「距離設定型」「光沢度判別用反射型」などもあります。
透明体検出光電センサ「TRU-C23PAシリーズ」の強み・特性
Contrinexの透明体検出光電センサの強みは簡単に言うと、2つの独自技術を採用し、検出精度100%を達成している点です。特に食品業界などで、透明のビニールや薄いフィルム包装、液体の入ったビンなどを検出しようとするとき、お困りはありませんでしたか?
そもそもビニールやフィルム包装などの透明体は、光をすり抜けてしまいます。透過型を利用すると、透明体の場合には光をほとんど減衰させずにすり抜けてしまうため、受光側の光強度(INTENSITY)の変化が小さく、物体の有無をうまく判断できません。そこで回帰反射型によって、透明体を一度すり抜けた光を、さらに反射させ、もう一度検出体を通し、光を減衰させ、光強度の変化を見ていました。
メーカー各社では、透明体を検出できる光電センサを開発するために、これまで創意工夫を凝らしてきました。ただし、従来までの光電センサの光源は、可視光が使われていました。そのため薄く透明なフィルムでは、回帰反射型であっても、光量の減衰が小さく、うまく検出ができないケースがありました。また、透明ガラスなどの表面には凹凸があるため、光が散乱して1つの物体を2回に数えてしまうなど、誤検知の原因にもなります。
たとえば、100本のビンをカウントする際に、もし1本の数え間違いがあったとしましょう。「1本ぐらいならば誤差範囲では?」と思われるかもしれませんが、ちょっと考えてみてください。もし1日に10万本のジュースをカウントする大量生産ラインがあったとき、その精度では1000本もの誤差が出てしまうことになります。これでは現場も大変です。
ところが、Contrinexの光電センサならば、そんな課題もクリアしてくれます。というのも、同社のパテント技術と、センサ光源に世界初となる偏向UV(紫外線)を採用しているからです。透明体にはUVを吸収する性質があります。その性質を活かし、受光側では光量が可視光と比べ大幅に減衰します。対して、従来のセンサでは先述のとおり減衰量が小さいため安定した検出ができません。
光源がUV光と可視光の場合の減衰量の違い。UV光では、透明体から返ってくる光量の強さ(INTENSITY)が大幅に減衰している
そのため、これまで検出が困難だった透明体の正確な検出も可能になるのです。これが来場者の皆様が驚きと関心を抱かれた大きな理由です。
ラップのような薄い透明フィルムでも、UV光源を利用した光電センサならば安定して検出できる
非常に透明度の高いガラスの検出にも最適。検出光の散乱による誤検知がなく、確実にカウントが可能
衛生に厳しいEcolab認定で食品業界に適し、食肉パックの検出・カウントも可能。IO-Link経由で感度調整をリモートで行える
さらに光量の減衰値が大きいということは、検出の信頼性のみならず、経時的な環境変化に対しても強いことを意味します。一度セッティングすれば、何度も調整する必要はありません。段取り替えによって検出体が変わってもセンサの感度調整も不要になります。
ちなみに、このTRU-C23PAシリーズの検出範囲は1000mmとなっており、感度調整(ティーチング、IO-Link経由)、出力(PNP/NPN、ライトオン、ダークオン、スタビラティアラーム)、接続(ケーブル、コネクタ)の組み合わせによって、計8タイプのセンサをご用意しています。
ケーメックスの社内検証チームは、これまで透明シートやフィルムだけでなく、液体の入った透明ビンや、お菓子用の丸みを帯びたカップなども含めて、たくさんの対象で実験を行ってきました。こちらでも100%という驚異の検出率を確認できました。とはいえ、「まだ本当にそんなに精度が良い製品が存在するのか?」と思われるかもしれません。そこで次回は、我々の検証結果についても可能な限り公開してみたいと思います。
透明体検出光電センサ「TRU-C23PAシリーズ」の性能実験
ケーメックス社内にてTRU-C23PAシリーズの素晴らしさを検証した結果についてご報告したいと思います。実は、我々自身もお客様より「これまでいろんなセンサを試したけどこの透明体は検出が難しくて悩んでいる…」と伺っていたので最初は半信半疑でした。しかし結論から申し上げますと、検証した限りにおいて、やはりTRU-C23PAシリーズの検出精度は100%になることを確認できました。
透明のビニールや薄いフィルム包装、液体の入ったビンなどを透明体検出光電センサで検出する際、透明体は光をすり抜けてしまいます。光電センサは、光強度(INTENSITY)の変化を受光部で読み取ることで、そこに対象物があることを判断します。従来の方法では、検出すべき光強度の変化が少ないために、高精度な検出が困難でした。
そこでTRU-C23PAシリーズは、センサ光源に透明体でも減衰しやすい偏向UV(紫外線)を採用することで、この問題をクリアしたのです。我々は、これまで正確な検出が難しかった透明シートやフィルムだけでなく、液体の入った透明ビンや丸みを帯びたカップなども含めて、20種類以上の対象物で実験を行ってみました。
新製品と比較するために、可視光を採用した標準的なContrinexの光電センサも試してみました。
透明体検出実験①アクリル板
まずは透明または半透明なアクリル板での実験です。半透明な物体は、もともと光の減衰が大きいため、TRU-C23PAシリーズでも従来のセンサでもほぼ結果は同じです。
一方、透明な物体では、従来センサと比べ、光の減衰値に格段の違いが出ていることがわかります。
つまり、この減衰が大きいほど、判別のしきい値の範囲に余裕が生まれ、精度のよい検出ができるわけです。
実験結果その1。半透明な物体の検出。従来型の可視光センサも、UVセンサも結果は同じで、受信する光強度の変化に差はない
実験結果その2。透明な物体の検出。従来型の可視光センサもUVセンサで、受信する光強度の変化に明らかな差が出ていることがわかる
透明体検出実験②カラーフィルム
次にカラーフィルムについての実験結果もご紹介しましょう。
当初の予想としては、色付きのフィルムなので、半透明フィルムと同じような結果が出るものと考えていました。しかし、一部で意外な結果も出ています。
まず、紫・青・薄青の透明アクリル板の場合の結果を示します。
こちらは新製品も従来センサーもそれほど差がなく、光が減衰しているため、それなりに精度よく検出できることがわかりました。
実験結果その3。カラーフィルム(紫色)の検出。新製品も従来センサもそれほど差がなく、光が減衰している
実験結果その4。カラーフィルム(青色)の検出。新製品も従来品では少し強度に差が出るが、ある程度は許容できる範囲だろう
実験結果その5。カラーフィルム(薄青)の検出。同様に新製品も従来品では少し強度に差が出るものの、許容できる範囲だ
では、橙や赤のフィルムの場合はどうでしょう? この実験は意外な結果になりました。
下記画像のように、センサ側で受信する光強度が従来製品と比べて差が現れていることが明らかです。
標準的な可視光を用いる光電センサは、光の減衰が小さいため、橙や赤の透明体を検出するしきい値の設定によっては、うまく検出できない可能性があります。
しかしTRU-C23PAシリーズならば光の減衰が大きく、橙や赤の透明体でも確実に検出できます。
実験結果その6。カラーフィルム(橙色)の検出。明らかに新製品と従来品では、受信強度に差が出ていることがわかる
実験結果その7。カラーフィルム(赤)の検出。こちらも橙色と同様に、明らかに新製品と従来品では、受信強度に差が出ている
また、色によって減衰量が異なるということは段取り替えによってセンサの光強度の調整が必要となります。
TRU-C23PAシリーズはその点調整不要とも言えるでしょう。
透明体検出実験③ 液体入りの透明ビン
もうひとつ面白い実験をご紹介しましょう。これは液体入りの透明ビンでの結果です。
ビンは表面が湾曲していますから、光が当たれば散乱します。ビンの中身の液体も光を拡散するため条件はより悪くなります。
しかし、このような場合でもTRU-C23PAシリーズは、安定して光を減衰させ、物体を検出することができます。
この実験結果を下記に示しました。
従来のセンサでは、受信側の光強度の変動が激しくて、大きな山(光強度が強い場所)が2回ほど現れていることがわかります。
不安定なこの状態では、コンベアから流れてきた物体が本当は1個なのに2個あると誤ったカウントをする恐れがあります。
実は、これがお客様が苦労していたところなのです。しかしTRU-C23PAシリーズの結果を見てください。
これまでと同様に安定した結果になっていますので、誤検知することはありません。
実験結果その8。液体入りの透明ビンの検出。
従来製品では信号強度がバタつくため、誤検知しやすいことがわかる。
一方、新製品の受信光の強度は安定しているため、精度が高い。
まとめ
我々の検証結果ではTRU-C23PAシリーズの検出精度は100%であり、誤検知もしないことがわかりました。
もちろん工場内は理想的な実験室の環境とは異なり、さまざまな外乱が発生します。
そのため、まったく同じ結果が得られるとは限りません。しかし、従来の光電センサと比べてみれば、その差は歴然です。
これが我々がTRU-C23PAシリーズを自信をもって推奨する大きな理由であり、お客様が期待している点なのです。
製品にご興味を持っていただいたり「うちの製品もセンサに悩んでて・・・」といったお悩みをお持ちの方はぜひお気軽にお問い合わせください。
砂川 裕樹プロダクトマネージャー
Murrelektronikのエキスパートになるべく奮闘しています。
お客様の問題点の解決や要望に応えられるよう日々勉強中です。
学生時代から鹿島アントラーズの熱狂的ファンでチームが勝つべく毎週全力応援。
時には残念な結果に終わることもありますが、敗戦をお客様の機械配線のご相談に引きずらないようオンオフの切り替えをしっかりしております。
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