産業用配線の“困りごと”解決講座(第5回目)
2017/03/31
- Murrelektronik
砂川 裕樹
【困りごと、その3】CUBE67を導入し、よりコストを削減するコツ(IOユニット・モジュール化&ケーブルコネクタ化)
前回は、Murrelektronik社のフレキシブルIP67 I/Oシステム・「CUBE67」の概要について触れました。CUBE67は、既存の大手フィールドバス(DeviceNet、PROFIBUS、PROFINET、EtherNET/IP、EhterCAT、CANOpen)を、省配線化に最適なローカルバスに変換することで“システム全体の最適化”を図れるリモートIOシステムという位置づけでした。
今回から数回にわたって、このCUBE67を導入することで得られるメリットについて詳しくご紹介していきたいと思います。
まず読者の皆様が最も気になる「コスト削減」に関するメリットから、ご説明していきましょう。CUBE67を導入すると、ケーブルがコネクタ化されるため、配線工数が大幅に減り、トータルコストの低減に効いてきます。たとえば、従来までの中継箱を利用したパラレル構成の配線と比べてみましょう。
これまでは、エッジ側の複数のセンサやアクチュエータを、すべて一対一でPLCのIOカード側端子に接続するパラレル配線が主流でした。パラレル配線では、配線数が多くなり制御盤まわりが非常に煩雑になる傾向にあります。そこで、配線の取り回し作業を効率化するため、いったん中継箱で各ケーブルを集線し、多芯ケーブルにすることで解決していました。これは読者の皆様が実施している一般的なユースケースでしょう。
中継箱を利用したパラレル配線。中継箱で各ケーブルを集線し、多芯ケーブルにすることで、PLCのIOカード側に接続するという一般的な方式。
この際の配線作業では、ケーブルの結線やマークチューブの処理などを、すべて手作業で1本ずつ処理していく必要があるため、かなり工数が掛かっていました。そこで第1回目のコラムでは、まず第一ステップとして中継箱を省配線ボックス「Exact12」に置き換えて、従来の配線作業をコネクタ配線に変えることで、作業をラクにするという手法をご紹介しました。
ただし、Excat12に置き換えただけでは、伝送方式は従来どおりのパラレル方式のままで、PLCのIOカード側にセンサやアクチュエータなどの信号が並列伝送されることに変わりはありません。どうしても制御盤内の端子台への配線作業は従来どおりになります。そこで今度は、さらにコネクタ化によるトータルコスト削減を推し進めるために、シリアル伝送方式のリモートIOシステムを利用するという第二ステップに入ります。
実は、これまでもパラレル信号をシリアル信号に変換し、フィールドバスに対応させるような一般的なリモートIOシステムが市場で流通していました。これらの機器は、エッジ側にあるセンサなどの外部機器(信号)を、リモートIOにダイレクトに取り込めるようになっていますが、それぞれのリモートIOにスレーブ機能を含む通信インターフェースを内蔵した「ASIC」と呼ばれる高価な専用チップが必要になります。
エッジ側のパラレル信号をシリアル信号に変換し、フィールドバスに対応させる一般的なリモートIOシステム。各IOシステムに高価なASICを搭載している。
一方、Murrelektronik社のCUBE67のほうは、フィールドバスとローカルバス(CUBE67)を変換する親機(バスノード)と、親機に対して自由に接続できる子機(IOモジュール)で構成されます。バスノード自体は、前者のようにエッジ側のIOを直接取り込む方式ではありません。しかし、子機のIOモジュールを通じて、ローカルバス経由で親機のバスノードへセンサなどの各種信号を伝送することができます。
ここでコスト面で大きなポイントになるのが、CUBE67では高価なASICが親機のバスノードのみに実装されており、その他のIOモジュールには搭載されていない点です。そのため従来型のリモートIOと比べると、子機のIOモジュールは3分の1程度のコストで済むようになります。
CUBE67では、高価なASICが親機のバスノードのみに実装され、その他のIOモジュールにはASICは搭載されていない。そのため、IOモジュールが増えるほどコストメリットが得られる。
CUBE67のバスノードは、前回ご説明したとおり、最大32台までのIOモジュールの接続に対応します。実際には32台までフルに接続するシステム構成は少ないかもしれませんが、各IOモジュールに高価なASICが搭載されていないため、10台程度のシステムでも相当なコスト削減につながることをご理解いただけると思います。
もうひとつ、CUBE67でコストダウンを実現できる理由として、コネクタ化することでケーブルの配線工数を減らせるだけでなく、省配線化されるというメリットが挙げられます【★写真4】。従来までは、通信用のM12コネクタケーブルと、動力用の7/8″コネクタケーブルが分離され、各デバイス間に橋渡しにする形で接続されていました。しかし動力用ケーブルはかなり高価なものです。
CUBE67のコネクタ化。ケーブルの配線工数が少なくなるだけでなく、ケーブル数が減り、高価な動力用ケーブルも半減できる。
CUBE67の通信ケーブルは、これらの動力線と通信線を1本にまとめたハイブリッドタイプになっています。そのためバスノードとIOモジュールや、IOモジュール同士のケーブル配線が1本に統合され、ケーブル数も半減します。もちろんケーブルが減ったぶん、配線もスッキリして、コストも安くあげられるというメリットを享受できるわけです。
次回も、CUBE67の導入によるメリットについて、引き続き解説したいと思います。
砂川 裕樹プロダクトマネージャー
Murrelektronikのエキスパートになるべく奮闘しています。
お客様の問題点の解決や要望に応えられるよう日々勉強中です。
学生時代から鹿島アントラーズの熱狂的ファンでチームが勝つべく毎週全力応援。
時には残念な結果に終わることもありますが、敗戦をお客様の機械配線のご相談に引きずらないようオンオフの切り替えをしっかりしております。
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