【連載6】いかにして正しいケーブルを選定するか! 工業用ケーブル選びの勘所
2017/04/24
- LAPP
ノイズが飛び交う工場などに適したケーブル選びのポイント
これまでケーブル選びのポイントとして、動きの激しい可動部や、高温・多湿の過酷な環境、薬物・油がかかる設備などの特殊環境で使えるケーブルについてご紹介してきました。今回は信号伝送において、特に重要なファクタとなる「耐ノイズ性」を有したケーブルに関して、ご説明したいと思います。
工場内には、電源やインバータ、モータなど、ノイズを発生する機器が数多く設置されています。また屋外でも、高圧線があるような場所や鉄道の近くなどは、ノイズが飛び交っています。こういった環境で信号を伝送する際は、ケーブル線がノイズを拾ってしまうことがあるため、特に注意が必要です。
たとえば、工場内でサーボモータの制御信号を伝送する際に、ノイズが乗ってしまうと、ロボットなどの機器が誤動作する可能性があるかもしれません。また、大電流を流す動力線の影響などで、センサの微弱なアナログデータ信号にノイズが乗ってしまうこともあります。
そこで耐ノイズ性に優れたケーブルを選ぶことは、工場の自動化にとっても、いま話題のIoTでデータを収集するにしても、非常に重要なポイントになるわけです。
シールド処理を施した一般的なケーブルの構造は、中心の導線から、絶縁体、心線、巻紙、内皮、編組シールド、外皮の順に構成されています。ここで耐ノイズ性に効いてくるのが、外皮の内側にあるシールド構造です。
シールドには、電圧の影響を防ぐための静電遮へいと、電流の影響を防ぐ電磁遮へいがあります。前者は銅テープ・銅編組・アルミテープなどを使います。一方、後者の場合は、これらに加え、軟鉄テープを使うこともありますが、鉄編組のアーマードはEMCの要求を満たさず、機械的な保護を目的に使われます。
編組、フォイル、併用タイプの3方式のシールドを使い分ける
Lapp社は、ノイズに強いEMC(Electro-Magnetic Compatibility:電磁適合性)のシールド素材を使ったケーブルを提供しています。たとえばOLFFLEXのシールドには、EMC準拠の組編みに使用される銅材のみを使用し、シールドカバー率を85%以上まで向上しています。また信号伝送時のインピーダンスは250Ω/mほどで、ノイズを拾いにくいという性能も特徴のひとつといえます。
OLFFLEXのシールドの特徴。EMC準拠の銅編組みを使用し、シールドカバー率を85%以上まで向上。
信号伝送時のインピーダンスは250Ω/mで、ノイズが乗りにくい。
ここからは、いくつか具体例として代表的な製品を挙げてみましょう。
LAPP社の代表的なシールドケーブル例。上から低周波帯をカバーする銅編組、高周波対帯をカバーする
フォイルシールド、および低周波から高周波までをカバーする併用タイプ。
以前、Lapp社のケーブルには、OLFLEXブランドのほか、信号用ケーブルとして、フィールドバスケーブルのブランド「UNITRONIC」や、イーサーネットケーブルのブランド「ETHERLINE」、イーサネット用光ファイバケーブルのブランド「HITRONIC」が用意されていると、ご説明しました。もちろん、これらはデータ伝送用なので、シールドにも気を使っています。特に光ファイバの場合は、電気的なノイズは乗りません。
まず、代表的なケーブル製品として、低周波帯域の電磁結合に有効な編組シールドを採用した「OLFLEX HEAT 180 EWKF C」が挙げられます。これは、優れた機械的特性を持つ遮蔽シリコンケーブルで、前述のようにシールドに使われるEMC対応の銅ブレードが、電磁妨害からケーブルを守ってくれます。
一方、高周波帯域での容量結合に有効なフォイルシールドを採用した「UNITRONIC EB JE-Y(ST)Y BD」も用意しています。こちらは、銅ドレイン線(アース線)とアルミラミネートのプラスチックフィルムのシールド素材で内皮を包んでいるものです。
さらに両方のメリットを活かし、フォイルと編組シールドを採用することで、低高周波から高周波までをカバーする「UNITRONIC Li2YCY PiMF」もあります。型式のPiMFは「Pair in Metal Foil」の略ですが、こちらは高レベルの電磁妨害が加わる環境などに適し、特に測定データの伝送や、2線シリアル伝送に最適なシールドケーブルです。
今回は、Lapp社の代表的なシールドケーブルについて学びました。ケーブルは地味な存在ですが、とても奥が深いテクノロジーです。データを収集する場合などに、ケーブルの選定をおざなりにすると、せっかく苦労して収集したデータが無駄になってしまいます。
環境アセスメントを事前に実施して、しっかりとしたケーブルを選ぶことが、後々のトラブルを回避する最良の策となることを念頭に入れておいてください。それでは、また。
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