【連載5】いかにして正しいケーブルを選定するか! 工業用ケーブル選びの勘所

2017/03/31

  • LAPP

環境にマッチした最適なケーブルを選ぶポイントとは?

こんにちは。工業用ケーブル選びの勘所、第5回目の連載をお届けします。前回は可動用途に適したケーブルのポイントについてご説明しました今回のテーマは、耐油性など、さまざまな厳しい環境にさらされても耐えられるような、耐環境性に優れたケーブル選びのポイントについて紹介したいと思います。

ひと口に耐環境性といっても、ケーブルを利用するシーンでは多くのファクターがからんできます。たとえば前回ご紹介した高性能稼働ケーブルも、機械的な負荷がかかる過酷環境という意味では、耐摩耗性や耐切断性に優れた製品といえるでしょう。

屋内(工場内)でケーブルをご利用になる際に、まず頭に浮かぶ耐環境性とは何でしょうか? 機械の近くで使われるケーブルの場合は、鉱物油や合成油、また植物油など、いろいろな種類の油類がかかることがあります。そこで油が付着しても、長期にわたり劣化しない耐油性のケーブルが求められます。また、特殊な薬品を扱うような環境では耐薬品性が必要です。

もちろん導入される場所によっては、高温下や低温下の環境も考えられるため、耐熱性や冷温性も欠かせません。高温・低温を繰りかす場合はケーブルが劣化しやすくなりますので、使用環境温度に合ったケーブルを選定してください。火災や高熱によってケーブル外皮が発火し、ケーブルによる炎の伝播を防ぐために難燃性もケーブル開発において主要課題のひとつになっています。実は難燃性には、ケーブルに含まれるハロゲン系の元素(フッ素・F、塩素・Cl、臭素・brなど)が関係してきます。ハロゲン系の元素を外皮に多く含むケーブルは、火炎伝播性が低く、難燃性が高い(燃えにくい)という性質があります。一方で、もしケーブルが燃えてしまうと、 塩酸やダイオキシンなど多量の有毒ガスを発生させてしまいます。

このように難燃性とハロゲンフリーはトレードオフの関係であるため、しっかりと利用シーンを考えなければなりません。たとえば、ホテル・ショッピングモール・学校といった施設や、オフィス・工場などでのように人の出入りが多い場所では、ハロゲンフリーのケーブルを利用しつつも、できるだけ燃えにくいケーブルが求められます。

 もちろん、ケーブルは屋内のみで使われるものではありません。空港・鉄道・発電所など、屋外で使用されることもあるでしょう。その際は、天候性も重要なファクターになります。たとえば年中、太陽にさらされる場合は、耐UV性や耐オゾン性も考慮に入れましょう。一般的に、ケーブルの外皮色がブラックの場合は、他の色に比べて高いUV性能があります。また雨や雪がよく降るような場所では、耐加水分解性も必要です。

 

ケーブルの外皮によって、耐環境性も大きく変わる! 

このように耐環境性という切り口でケーブルをチョイスする場合は、さまざまな要素が絡み合ってきますが、ゲーブル選定の際に効いてくるのが、ケーブルの外皮・絶縁にどんな材質が使われているかという点です。

ゲーブルの外皮に利用される代表的な材質としては「PVC」(ポリ塩化ビニル・クロライド)、「PUR」(ポリウレタン)、「TPE」(熱可塑性エラストマー)、「PE」(ポリエチレン)、「CR」(クロロフレンゴム)、「SI」(シリコンゴム)などが挙げられます。材質によって一長一短がありますので、それぞれの性質を理解して、適材適所で利用することが肝要です。

下記に、主な材質の特徴について示します。スマイルマークが多いほど、優れた性質を有しています。


代表的なケーブルの外皮材質の特性。導入される場所やシーン、室内/室外によって環境が大きく変わるため、材質についての事前検討は重要。

たとえばPVCは、一般的に「塩ビ」という名で流通しており、すべての性質において平均的な性質をもつ安価な材質です。水に沈む・燃えにくい、硬質と軟質の素材があります。


PURとTPEは、油に強いという特徴があります。PURは熱硬化型のウレタン樹脂で、特に耐鉱油性があり、耐摩耗性や耐切断に優れ、柔軟な性質があります。そのため工作機械などのケーブルにも利用されます。


またTPEは、TPEは熱可塑性で、環境によってゴムやプラスチックに似た性質をもつ、中間的な性質があります。こちらは耐合成油・耐植物油性があります。高温・低温での対応や、難燃性にも優れており、特に厳しい環境下での使用に適しています。ただし、PURよりも高価という短所もあります。


PEは、水より軽く、すべての性質で平均的な性質があります。生産量が最も多く、一般に流通しています。CRは、耐熱性、耐オゾン性などの耐天候性を持ちます。SIも同様に耐天候性に優れ、熱・熱水・油に強く、ゴムや固形物などに加工することができます。

 

最後になりましたが、LAPP社では耐環境性に優れたÖLFLEXブランドのケーブルを多数ご用意しています。個別の製品については、別の機会にご紹介しますが、ここでは一部の事例を示しますので、ケーブル選びの参考にしていただければ幸いです。


 

LAPP社のÖLFLEXシリーズ。PVC、PE、TPE、TPE-R、CR、SIなど、利用シーンに応じた外皮のケーブルを用意。


次回は、工場の信号伝送などで特に重要なファクターとなる耐ノイズ性に関してお話ししたいと思います。それでは、また。

 

 

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