【ケーブルセミナー・サポート記事その3】 ケーブル基礎の基礎! 自社にマッチする製品をチョイスするカタログの読み方その2

2021/11/08

  • セミナーサポート
  • LAPP

増田 将吾

☆前回までの記事は下記をクリック☆
【ケーブルセミナー・サポート記事その1】 ケーブル基礎の基礎! 自社に最適なケーブル選定の秘訣を徹底解説
【ケーブルセミナー・サポート記事その2】 ケーブル基礎の基礎! カタログから読み解く「自社に最適なケーブル選定」



【目次】
ケーブル選定におけるカタログの読み方+3
 ⑦定格電流
 ⑧最小曲げ半径
 ⑨難燃性
 ⑩シールド(EMC対策)
ここに注目! モータ用や可動用のケーブルに最適なLAPP社の製品を厳選して紹介!
 ■各種サーボモータ用ケーブル
 ■可動用ケーブル(ドラッグチェーン用)
 ■ロボット専用ケーブル
 ■耐熱ケーブル


ケーブル選定におけるカタログの読み方+3

前回はカタログの具体的な読み方についてレクチャーしました。今回はLAPP社のモータ用ケーブル「OLFLEX SERVO 9YSLCY-JB」を例に、もう少し踏み込んで説明したいと思います【★写真1】。

【★写真1】ケーブル選定時に押さえたい主なスペック。①認証規格 ②公称電圧 ③電線心数と導体断面積 ④導体の仕様 ⑤温度範囲(導体)⑥絶縁体と外皮の仕様に加えて、⑦定格電流 ⑧最小曲げ半径 ⑨難燃性 ⑩シールド(EMC対策)も押さえておこう。

ケーブル選定時に押さえたい主なスペックは、前回ご説明したとおり、①認証規格 ②公称電圧 ③電線心数と導体断面積 ④導体の仕様 ⑤温度範囲(導体)⑥絶縁体と外皮の仕様 になります。さらに今回はこれらに加えて、以下の4つがポイントになります。

⑦定格電流

⑧最小曲げ半径

⑨難燃性

⑩シールド(EMC対策)

①~⑥は前回ご説明したので割愛しますが、①の認証規格のみ補足すると、欧州では共通の統一ルールとしてCEマークを、米国ではULマークを採用していますので、両地域に輸出する場合は、各地域の認証が取れているケーブルを選ぶと、在庫を増やさずに済みます。

なお米国の場合、電気利用時の危険から人命や財産を保護するNEC(National Electrical Code)、またはNFPA(National Fire Protection Association:全米防火協会)といった規格があり、バージョンに依ったり、州ごとに異なるルールが適用されるため、輸出時には注意しましょう【★写真2】。

【★写真2】米国で適用されるNECやNFPAでは、州によって異なるバージョンやルールが求められるため、輸出時には特に注意する必要がある。

ここから3つの新規項目の説明となります。

⑦定格電流

多芯(4心)で、導体断面積が2.5sq(スケ)、周囲温度30℃、一条(1本)敷設のケーブルで考えてみましょう。なお心数のうち1つはアース線なので、実際に使用するケーブル線は4-1=3になります。

定格電流を算出する場合に注意したい点は、規格によって差があることです。たとえばドイツのVDE規格と、米国のNEC規格では産出値が異なってきます。

まずはVDEのケースとして【★写真3】の左表をご覧ください。電圧1000V以下、周囲温度30℃で、ケーブルの通電心数は3、導体断面積は2.5㎜2の場合、表から横ライン(通電心数)と縦ライン(導体断面積)の交点を探すと、定格電流は26Aとなります。

【★写真3】規格によって、定格電流を算出値が変わるので注意しよう。左はVDEの場合、右はNECの場合で、ほぼ同じ条件でも、定格電流は26A、20Aとかなり異なってくる。

次にNECのケースですが、こちらは【★写真3】の右表から定格電流値を算出します。電圧2000V以下、周囲温度30℃、2.5mm2に(2.5を超えない)最も近い導体断面積はAWG14なので、定格電流は20Aとなります。 

なお、周囲温度が高くなったり、通電心数が増える場合は、算出された定格電流値に減少係数をかける必要があります(温度や心数により電流値が変化します)。

⑧最小曲げ半径

ケーブルを敷設する際にも注意が求められます。ケーブルが固定される場合は問題ありませんが、固定されずにフレキシブルに動く場合があります。そのとき考慮したいのが、ケーブルの最小曲げ半径です。

ケーブルを曲げられる半径は「ケーブル外径×係数」で決定されます。このときの係数は固定では「4」、フレキシブルでは「15」が目安です。たとえばケーブル径が10㎜ならば、固定の場合は10×4=40㎜、フレキシブルの場合は10×15=150㎜まで許容できることになります【★写真4】。

【★写真4】ケーブルを固定して敷設する場合は問題ないが、機械が可動したり、ロボット用などのケーブルでは、ケーブルが繰り返し曲がるため、最小曲げ半径や捻転も考慮にいれたい。

さらにロボット用などで、ドラッグチェーンと共にケーブルが動いたり、エンドエフェクター部で捻りが生じるときも注意が必要です。ケーブル自体が動く場合は、何サイクルの繰り返しで寿命に達するのか、あるいは捻転するときは何度まで回転を許容できるのか、たとえば±180°や360°など、カタログで数値を調べておきましょう。

⑨難燃性

ケーブルが燃えると、火災が広がってしまうことがあります。そこで、燃え広がらない製品選びも重要です。LAPP社では「FR-**」というグレードで難燃性を明示しています(※米国LAPP独自基準です)。同社のモータケーブルでは、水平にして火をつけた場合と、垂直に火をつけた場合で、どれぐらい燃え広がり、何分後に火が消えるのかという水平/垂直試験を行っています。

また、どのくらい煙が出るのかという試験も実施しています。外皮の材質がPVCのケーブルでは、煙が多く出て有毒ガスが発生します。船舶や公共施設などでは、燃えても有毒な煙が出ないハロゲンフリーのケーブルを採用することが大切です【★写真5】。

【★写真5】LAPP社のケーブルにおける難燃性の基準。FR-00~FR-06≪←05まで?≫までグレードが用意されている。FR06が最も難燃性に優れる。有毒ガスを出さないハロゲンフリーも重要だ。

⑩シールド(EMC対策)

シールドケーブルの内部には遮蔽層があり、さまざまな種類のシールドが施されています。サーボモータでは、モータを駆動するドライブ回路が原因でノイズが発生します。これはPWM制御を行う際に高周波でパルスを制御するためです。モータ自体も誘導性が高く、ハイインピーダンスになり、反射性ノイズが増幅されてノイズの原因になります。

またサージなどで瞬間的な高電圧がかかると、ケーブルが絶縁破壊を起こして短寿命になるため、通常よりマージンをとったケーブルにしましょう。そのほかケーブルの浮遊容量も考慮する必要があります。コモンノードノイズを抑えるために、低キャパシタンスのケーブルを選定しましょう【★写真6】。

【★写真6】モータ駆動回路などが原因で発生するノイズ。専用ケーブルには、シールド付でEMCノイズ耐性を有するものや、コモンモードノイズを低減できる低キャパシタンスのもの、瞬間的な高電圧に耐えられるものを選ぶとよい。

ここに注目! モータ用や可動用のケーブルに最適なLAPP社の製品を厳選して紹介!

ここまでは、ケーブル選定における基本的なポイントを押さえてきました。ここからはLAPP社のモータ用ケーブルを中心に、代表的な製品について紹介していきます。

■各種サーボモータ用ケーブル

LAPP社では、ロボットメーカーやFAメーカー、工作機械メーカーなどに採用実績があるサーボモータ用やエンコーダー用の各種ケーブルを取り揃えています【★写真7】。

【★写真7】
〈ÖLFLEX® SERVO 719 CY 製品ページはここをクリック〉
〈OLFLEX® SERVO FD 796P/796CP 製品ページはここをクリック〉
〈ÖLFLEX® SERVO 728 CY 製品ページはここをクリック〉
〈ÖLFLEX® SERVO FD 798 CP 製品ページはここをクリック〉

ノイズを気にする現場でも安心して使える「OLFLEX SERVO 9YSLCY-JB」は、シールドと3本のアース線が付いています。また「OLFLEX VFD 2XL」は、NFPA79に準拠したUL可動用ケーブルで、主要サーボモータメーカーに適しています【★写真8】。

【★写真8】
〈OLFLEX® SERVO 9YSLCY-JB/2YSLCY-JB製品ページはここをクリック〉
〈OLFLEX® VFD 2XL 製品ページはここをクリック〉
■可動用ケーブル(ドラッグチェーン用)

LAPP社は、機械システムの可動部に適用する「ケーブルドラッグチェーン」も取り扱っており、多くのお客様が可動用ケーブルとセットでお求めになっています【★写真9】。

【★写真9】
〈ケーブルベア用サーボモータケーブルシリーズのページへはここをクリック〉

同社の可動用ケーブルは、柔軟性によって「Basic-Line」(200~300万回)、「Core-Line」(~700万回)、「Extended-Line」(700万回~)の3タイプがあり、ケーブルの構造から「シングルコア(単線)」と「マルチコア(複線)」を用意しています。

マルチコアのBasic-Lineのうち、稼働速度が遅い工作機械などに用いられる代表的な製品が「OLFLEX CHAIN 809 CY」です。UL規格や、耐油性の高いPURを採用した製品、ノイズに強いシールド付などのラインアップがあります。「OLFLEX CHAIN TM CY」は、UL Listed取得済の万能ケーブルとしてご好評いただいています【★写真10】。

【★写真10】
〈ÖLFLEX® CHAIN 809 CY 製品ページはここをクリック〉
〈OLFLEX® CONTROL TM/TM CY 製品ページはここをクリック〉

高速なガントリーローダーなどで耐屈曲性が必要な場合は、Extended-Lineの「OLFLEX CHAIN 896 P」が最適です。また水溶性クーラントを使用する際や、全天候での適用、耐薬品性が求められる場合には、外皮に特殊TPEを採用した「OLFLEX ROBUST FD C」も選ばれています【★写真11】。

【★写真11】
〈ÖLFLEX® CHAIN 896 P 製品ページはここをクリック〉
〈OLFLEX® ROBUST FD / FD C 製品ページはここをクリック〉

モータに大電流を流したいときはシングルコアのケーブルが適しています。代表的な製品には、単線ながら優れた屈曲性能を有する「OLFLEX FD 90 CY」があります。こちらはシングルコアのPVCシースですが、そのほかにもシールド付のPUR製などのケーブルも揃えており、EMC対策や優れた耐油性を発揮します【★写真12】。

【★写真12】
〈OLFLEX® FD 90/90CY 製品ページはここをクリック〉

■ロボット専用ケーブル

ロボット専用ケーブルの代表的な製品としては「OLFLEX ROBOT 900P/DP」を用意しております。ロボットの手首などで捻転(ひねり)がある部分で±360°まで、あるいは±180°(シールド付の場合)まで対応できます。材質がPUR製で、シーステスト済、耐油性に優れた製品も揃えています【★写真13】。

【★写真13】
〈OLFLEX® ROBOT 900 P/900 DP 製品ページはここをクリック〉

■耐熱ケーブル

最後に耐熱ケーブルですが、LAPP社では「OLFLEX HEATシリーズ」というラインアップがあります。動作温度-190℃~+650℃までワイドに対応できる専用ケーブルを揃えています。グラスファイバー、PTFE、シリコン、XLPEなど、様々な材質を採用し、燃焼しても有害ガスを出さないハロゲンフリー製品になっています【★写真14】

【★写真14】
〈OLFLEX HEAT シリーズページはここをクリック〉

ほかにもLAPP社には多種多彩な製品がありますので、これらの製品を検討したい場合は、弊社インサイドセールス部(insidesales@kmecs-automation.jp)まで、是非ご連絡いただければ幸いです。



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増田 将吾プロダクトマネージャー

主にMurrplastikやBinderを担当しています。
ヨーロッパの優れた製品を幅広く皆様にご紹介していきたいです。
週末にはボルダリングジムに通って汗を流しています。

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